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「想像することでつながる」 [言霊]

映画監督、山田洋次さん

「想像することでつながる」

2011年3月19日12時47分

写真:山田洋次監督
山田洋次監督

 

 東日本大震災で、大きな悲劇の中にいる人たちに、僕が何を伝えたらいいのか分かりません。

 家を失い寒風にさらされている人に、海に襲われて水の中で果てた人に、東京の家の中から何かを言うことなんて……とてもできませんよ。

 こんな時、自分たちに何ができるのかという声をよく聞きます。それも大事だけど、被災した人たちの悲しみや苦しみを、僕たちはどれくらい想像できるのか。そのことがとても大事だと思うのです。現地の人たちの心の中をどれくらいイメージできるのか、自分に問いかけ、悩む。そこから何かが学び取れるのではないでしょうか。

 もう一つ大事なのは、この大災害に、僕たちの国の政府がどう対応するのか、きちんと監視してゆくことです。原子力発電所の問題などで、きちんと情報が伝わってこないことが腹立たしいですが、そういうことも含め、国民として政府の動きをよく見ていて、問題ありと判断した時は、きちんと抗議の声をあげる。そうすることが、被災者への応援になると思います。

 こんな時、寅さんなら何と言うだろう、どう行動するだろう――と考えます。

 阪神大震災の後、神戸市の長田地区で映画を撮りました。焼け出された人たちから「寅さんに来てほしい」という声があがったのです。

 僕は、あんな無責任な男の映画を被災地で撮るなんて、とんでもないことだと思い、最初はお断りしました。

 でも、訪ねてきてくれた長田の人たちが、口々に、こうおっしゃるのです。

 「私たちが今ほしいのは、同情ではない。頑張れという応援でも、しっかりしろという叱咤(しった)でもありません。そばにいて一緒に泣いてくれる、そして時々おもしろいことを言って笑わせてくれる、そういう人です。だから寅さんに来てほしいのです」

 寅さんのような男が、そばにいることが何かの慰めになるのならば。そう考え直して、撮影に向かいました。

 あの焼け跡であった出来事を思うと、撮影していて、僕らはとてもつらかった。でも、長田の人たちはとても温かかった。ここで助け合い、支え合って生き抜いてきた人たちです。

 被災地とはまったく比較にならない苦労ですが、関東地方ではいま停電が起き、通勤電車には長蛇の列ができています。大勢の人が、愚痴も文句も胸に納めて、整然と、黙々と行動しています。遠くで厳しい現実に耐えているたくさんの人たちのことが、頭の中にあるからではないでしょうか。

 貧弱な想像力を懸命に働かせて、被災地の人たちを思い続けたい。そうすることでつながっていたい。今はただ、そう思っています。(聞き手・山口宏子)

 http://www.asahi.com/special/10005/TKY201103190182.html

 

こういうい人たちは何故こうも心の響かせ方を知っているのだろう・・・ずるすぎる。


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